2022.10.25
チョコレートの栄養学:カフェインについて
「チョコレートは体に良い?食べて期待できる効能・健康効果について」でもご紹介しましたが、チョコレートにはカフェインが含まれています。
コーヒーや紅茶にも含まれているカフェインは、適量を摂取することで眠気覚ましや集中力の向上、そしてリラックス効果が期待できます。
ここでは、チョコレートに含まれているカフェインについてお話しましょう。
カフェインとはどんな成分?
カフェインとは天然成分の一つであり、アルカロイド(植物に含まれる化合物の一種)です。
茶葉やコーヒー豆、そしてカカオに多く含まれています。
医療の場では医療用医薬品として用いられ、ドラッグストアでもカフェイン錠剤が販売されています。
飲料やお菓子に含まれることも多く、身近な成分だといえるでしょう。
チョコレートに含まれているカフェインを摂取することで、体にどんな影響がある?
カフェインは、眠気覚ましや集中力を高める効果を持つことで有名です。
カフェインを摂取して眠気覚ましの効果が得られるのは、自律神経の一つである交感神経が活発になるからです。
自律神経には活動の際に活発になる「交感神経」と、休眠の際に活発になる「副交感神経」の2つがあり、どちらかが活発になると、もう片方は作用が弱まります。
交感神経は運動や集中力を司るため、カフェインを摂取することで眠気覚ましになるだけでなく、集中力の向上にもつながるのです。
チョコレートに含まれているカフェインを摂取することで、デメリットもある?
眠気覚ましや集中力の向上といったメリットがあるカフェインですが、摂取量や摂取方法を誤るとデメリットを引き起こすことがあります。
カフェインを摂取することで考えられるデメリットは、以下の通りです。
覚醒作用があるカフェインは眠気覚ましには最適ですが、同時に興奮状態を引き起こすため、就寝前に摂取すると眠れなくなる恐れがあります。
また、カフェインの過剰摂取を繰り返すことで、慢性的な不眠に悩まされることもあるので注意してください。
カフェインには、覚醒作用の他にも依存性があります。
チョコレートに限らず、カフェインを含む食べ物や飲料全般にいえることですが、摂取し過ぎれば依存性によってさらに多くのカフェインを求めるようになってしまいます。
適量を守っていればカフェインに依存することはありませんが、過剰摂取を繰り返すようなことは避けましょう。
カフェインの過剰摂取は国から注意喚起が
カフェインの過剰摂取は、国から注意喚起されるほどさまざまな健康被害が確認されているため、注意が必要です。
厚生労働省の発表によれば、カフェインの過剰摂取を行うと、不眠症や依存症を引き起こすという他にも、めまいや動悸、吐き気といった数多くの症状が出ることが報告されています。
特に、近年登場したエナジードリンクには、注意が必要です。
チョコレートはもちろん、コーヒーや紅茶以上のカフェインが含まれていることが多いため、常飲していると過剰摂取につながる可能性が大です。
チョコレートに含まれるカフェイン量は?
日本チョコレート・ココア協会の「チョコレート・ココア健康講座」によると、ミルクチョコレート25gに含まれるカフェインは7mgほどです。
板チョコは約50~60gのため、板チョコ1枚では約14~16.8 mgといえるでしょう。
また、独立行政法人 国民生活センターの「高カカオをうたったチョコレート(結果報告)」という調査によると、ハイカカオチョコレートのカフェインは、100gあたり68~120mgとされています。
こちらも約50~60gとして計算すると、ハイカカオチョコレートの板チョコ1枚に含まれるカフェインは、約34~72mgと計算可能です。
チョコレートの食べ過ぎはカフェインの過剰摂取につながる?
カフェインの過剰摂取は健康被害のリスクがありますが、チョコレートを食べる際には、そこまで気にする必要はありません。
日本では摂取許容量の設定を行っていませんが、米国食品医薬品局(FDA)では、健康な成人は、1日400mgまでであればカフェインを摂取しても悪影響はないとしております。
前述の通り、チョコレートに含まれているカフェインは、板チョコ1枚程度の量でおよそ14~16.8 mg前後となっています。
つまり、チョコレートだけで許容量のカフェインを摂取するには、30枚近くの板チョコを食べなければなりません。
その場合、カフェインの過剰摂取だけではなく脂質や糖分の大量摂取による健康リスクも問題になるでしょう。
子供や妊婦のカフェイン摂取量はどの程度が適切?
健康な成人と違い、気を付けたいのが子供や妊婦のカフェイン摂取量です。
子供は、大人と違ってカフェインに対する感受性が強いとされています。
大人よりも不眠症や依存症などになるリスクが高いと考えられるため、摂取量には気を付ける必要があるでしょう。
4~6歳は45mgまで、7~9歳なら63.5mgまで、10~12歳は85mgまでが目安です。
13歳を超えているのであれば、体重1kgあたり2.5mgで計算すると良いでしょう。
(例:48kgの子供なら、48×2.5で120mgが適量)
また、妊娠中の女性や、授乳期間中の女性も、子供への影響があるためカフェイン摂取量を調整しましょう。
妊娠中、あるいは授乳期間中の女性は、200~300mgまでを目安にしてください。
子供でも、板チョコであれば数枚は食べてもカフェインの摂り過ぎにはなりませんが、糖分は過剰になるため注意が必要です。
コーヒーや紅茶にも含まれるカフェイン
チョコレートを食べる際には、コーヒーや紅茶といった飲み物をお供にするという人も少なくないのではないでしょうか。
カップ1杯のコーヒーに含まれているカフェイン量は、およそ90mg。緑茶に含まれているカフェイン量は、およそ45mgだといわれています。
おやつに板チョコ1枚とコーヒー1杯を飲んだとしても、カフェインは104mg前後にしかなりません。過剰摂取の症状が出る心配はないといっても良いでしょう。
しかし、コーヒーや紅茶を何杯も飲んだり、エナジードリンクやカフェイン錠剤を飲んでいたりする場合はその限りではありません。
健康的に気兼ねなくチョコレートを味わうためにも、カフェインを含む飲料や錠剤の飲み過ぎには注意しましょう。
カフェインはどのような時間に摂取すると良い?
では、カフェインを摂取するタイミングとして適しているのはいつなのでしょうか。
ここでは、カフェインを摂取するタイミングについて見ていきます。
勉強前、ダイエット前にコーヒーとチョコレートを
チョコレートは、勉強や仕事の前、またダイエット前に摂取することでよりパフォーマンスを高めてくれます。
上述したように、チョコレートに含まれているカフェインには集中力を高める作用が確認されているため、勉強や仕事を行う際に、一つのことに集中できるようにサポートしてくれるでしょう。
また、お腹が減った状態でダイエットのエクササイズを行うよりも、糖分を摂取してエクササイズを行ったほうが、実はダイエットの効果が期待できます。
糖分は、人が体を動かす際に必要なエネルギー源であり、空腹で糖分が少ない場合、筋肉のもとであるタンパク質をエネルギー源として消費します。
結果、エクササイズの効果も薄れてしまうだけではなく、空腹による集中力の欠如はダイエットのパフォーマンス自体も落としてしまうでしょう。
チョコレートを食べれば、糖分を補給しながら、カフェインも摂取可能です。
また、チョコレートだけでなくコーヒーや紅茶といったカフェインを含む飲料を併せることで、さらに効率的にカフェインを摂取することが可能です。
タンパク質の分解を防ぎつつ、集中力の向上につなげられるので、摂取カロリー以上に大きなメリットがあるといえるでしょう。
チョコレートは寝る時間を意識して食べることも大切に
チョコレートは、就寝時間も考慮して食べるようにしましょう。
NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターの「カフェインと睡眠」によると、カフェインの効果は30分から2時間で発揮され、4~8時間ほどで効果が薄くなる半減期を迎えるとされています。
つまり、就寝時間に近いタイミングでチョコレートを食べると、睡眠の妨げになってしまう可能性があるのです。
寝る予定の時間から数えて、少なくとも2時間前には食べないようにするのがおすすめです。
もちろん、カフェインの効果や代謝までの時間はその人の体質によるため、あまり意識しないで良い方もいるかもしれません。
しかし、カフェインに対する感受性が強い方は、良質な睡眠をとるためにも、カフェインを含む飲食物を口にしない時間帯を決めてみると良いでしょう。
程よい摂取で美味しく健康に
カフェインの過剰摂取は、健康被害をもたらすため注意が必要です。
しかし、適切な量を摂取すれば、勉強や運動に良い影響をもたらしてくれるでしょう。
チョコレートが含むカフェインはそう多くなく、コーヒーや紅茶などと一緒に味わっても、簡単に過剰摂取にはなりません。
勉強に、ダイエットに、そして何よりやすらぎの一時の彩りに、チョコレートをお試しくださいませ。
参考
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
農林水産省:カフェインの過剰摂取について「各国におけるカフェインの接種に関する注意喚起等」参照https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html
厚生労働省ホームページhttp://www.chocolate-cocoa.com/lecture/q12/index.html
日本チョコレート・ココア協会https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0114-10j.pdf
独立行政法人 国民生活センター